区分マンション投資に銀行融資は出る?

区分マンション投資に銀行融資は出る?

区分マンション投資に銀行融資は出る?

こんにちは、ホンマル株式会社の村松です。

銀行の本部審査部で、不動産投資案件(中古アパート・中古マンション1棟購入を中心に、今回テーマの区分マンション購入など)の融資を数百件以上審査してきました。

関連記事: 【本部審査のホンネ】中古アパート・中古マンションの「融資」――ノンバンクは遠回り。最初から“プロパー融資”でいこう

正直に言うと、ネット上にある情報の多くは「営業マン寄り」「投資家寄り」で、“銀行側(審査する側)”の本音はほとんど出ていません。

今日は、その経験からこれだけは伝えたいことをまとめます。

  • ノンバンクは基本はNG。利用した瞬間に次が不利になる
  • プロパー融資を最初から狙うべき
  • 銀行には借りたいときに初めて行くのではなく、「日頃からつながりを持つ」ことが大切

ちょっと保守的に聞こえるかもしれませんが、「ノンバンクしか通らない=プロパーが付かない」なら原則購入は見送りが妥当です。

これは銀行の本部融資審査の現場で何度も見てきた“現実”です。

この記事は約7分で読めます。

早速!この記事の要約・ポイント
  1. 区分マンションはキャッシュフロー(CF)が薄いため、銀行審査は厳しいのが前提
  2. ノンバンクしか付かない=プロパーで不可なら、基本的には購入を見送るのが妥当
    短期売却の高い確度がある時だけ例外。
  3. 不動産投資を進めたいなら、一棟もの(アパート・マンション)投資を個人的に推奨
    評価が“事業性”寄りになり、資料と交渉で勝ち筋を作れる。
  4. 融資は「借りたい時にだけ銀行に行く」と通りにくい。
    事前に銀行との関係を作り、稟議が通る資料の型で準備することが不可欠。
  5. どうしても区分を選びたい理由がある方は、ご自身で徹底準備するか、当社のような専門家に相談してみてください。

関連記事(こちらもぜひ):プロパー融資とは?銀行からの融資の種類とプロパー融資のメリット・デメリットについて!

区分マンションは“CFがきつい→審査も厳しい”

銀行融資の「裏技」とは?見えない信頼づくりが実はカギ

区分投資の最大の特徴は「収益が一戸依存」ということ。

空室になれば、収益はゼロです。

さらに、

  • 管理費・修繕積立・PM手数料(いわゆる管理料)は毎月固定で出ていく
  • 土地持分が少なく、担保評価が伸びづらい
  • 賃料が下がれば、NOI(純収益)がすぐ細る

銀行は必ず「返済原資=CFの厚み」を見ます。

原則的に「年間返済<NOI」を安定して維持できなければ、稟議は前に進みません。

※よく、「キャッシュフロー(CF)が弱くても、時価評価が高いから最悪売れば返済できる。銀行からも借りれるよ」という不動産関係の方や投資家がいますが大部分でNGです。属性やその他諸々の背景を考慮して借りれるケースはありますが、あくまで銀行から借入するのなら区分マンションであっても「CF」がとても大事です。

分かりやすい指標(基本)

  • NOI:家賃 −(空室損+管理費+修繕費+PM費)
  • DSCR:NOI ÷ 年間返済額 → 1.2以上が目安。ストレスをかけても1.1を切らないこと。
  • LTV:融資額 ÷ 価格 → 区分は70%前後が一般的。

ケースA:表面利回り 4.5%

前提条件:価格3,500万円/LTV70%(自己資金30%=借入2,450万円)/25年・元利均等・月払い/運営費=賃料の28%/金利2.5%/空室損10%

  • 年間総賃料:157.5万円
  • 空室損(10%):15.75万円
  • 運営費(28%):44.10万円
  • NOI97.65万円
  • DSCR= 97.65 ÷ 131.89 = 約0.74通りにくい

ケースB:表面利回り 7.0%

前提条件:価格3,500万円/LTV70%(自己資金30%=借入2,450万円)/25年・元利均等・月払い/運営費=賃料の28%/金利2.5%/空室損10%

  • 年間総賃料:245.0万円
  • 空室損(10%):24.50万円
  • 運営費(28%):68.60万円
  • NOI151.90万円
  • DSCR= 151.90 ÷ 131.89 = 約1.15あと一歩(目安1.2に僅差)

補足(目安1.2を超えるには?)

  • この前提(空室10%・経費28%・金利2.5%・25年)なら、必要な表面利回りは概ね「約7.3%」です。
    (※NOI=賃料×(1−0.10−0.28)=賃料×0.62、DSCR≥1.2より逆算)
  • もしくは利回り7.0%のままで通すなら、LTVを約67%まで下げる(自己資金を少し厚くする)とDSCR≧1.2が見えてきます。
  • 「こんなに厳しいの?自己資金10%・表面利回り4%でも銀行融資通った人を知っている!ネットでもそう言ってた人がいる!」という人もいますが、属性やその他諸々の背景を考慮して銀行は融資決裁したと思われます。
  • 実際審査をしていた立場としては、このくらい条件が厳しいのがベースになります。逆に言うと、属性や銀行との関係性など、諸々整えっている場合は、自己資金割合も少なく、低金利な好条件で複数戸数買い進めることも可能。

関連記事(ぜひ):【経営者必見】「事前の一手は、事後の百手に勝る」――元銀行員が語る“経営判断の質”を高める思考とは?

区分 vs 一棟|銀行の評価の違い

「節税すると融資を受けにくい」は本当なのか?
観点区分マンション一棟もの(アパート/マンション)
銀行の見方個人属性重視(年収・勤続・借入)事業性重視(収益力・改善余地)
融資の型アパートローン/信販系中心プロパー融資/保証付事業融資
交渉余地小さい(画一的)資料次第で加点可能
拡張性個人枠で頭打ち実績や法人化で拡大可能

つまり、「不動産投資を事業として拡大したい」なら一棟ものが圧倒的に有利です。

区分は「エリア特化で合理性がある」「自己資金を厚く入れてもなおCFが残る」など、理由が明確な場合に限定して検討すべきです。

関連記事: 【本部審査のホンネ】中古アパート・中古マンションの「融資」――ノンバンクは遠回り。最初から“プロパー融資”でいこう

ノンバンクは“基本NG”

税理士やコンサルに任せきりで大丈夫?助言の質が資金調達を左右する

ノンバンクは、

  • 金利が高い
  • 返済期間が短い

この2つが重なり、区分のCFをさらに圧迫します。

実際、ノンバンクでしか付かない=銀行ではリスク過大と判断された案件です。

その後に銀行で借換えようとしても、実務的には難しいケースが大半でした。

例外は、

  • 相続や資産整理などで、短期売却の高確度があるケースに限られます。
  • しかもその場合でも、出口戦略を資料で根拠づけられなければ厳しいです。

よって私は、「ノンバンクしか付かないなら、その物件は見送りが基本」と結論づけています。

参考記事:ノンバンクでの資金調達、待った!法人が融資を受ける前に知るべき“落とし穴”と最後の選択肢

✅ 詳しく知りたい方は当社YouTubeチャンネルでも解説中! 📺【元銀行審査官ムラマツ|銀行攻略ラボ】

借りる前にやるべき準備(順番大事!)

節税&大口融資の両立を図るためのポイント

銀行融資は「申込書を出してから準備」では遅いんです。
本部で稟議にかけていた私から見ると、通る案件は最初の提出資料の時点で“勝負が決まっている”ことがほとんどでした。

01|数字の土台を固める

  • 返済期間分のキャッシュフロー表をつくる(ベース、空室増加、金利上昇の3ケース)。
  • DSCRやLTVなど指標は少し厳しめに置く
  • 登記費用や不動産取得税などの諸経費も正しく織り込む。

関連記事:【2025年最新】銀行審査は“ここで決まる”!融資を通す3つのポイントを元審査官が公開

02|自己資金の透明性

  • 通帳の入出金履歴を整理して、資金の源泉を説明できる状態にしておく。
  • 法人なら、決算書+試算表+資金繰り表を準備。赤字や資金繰りの不自然さはすぐに見抜かれます。

03|外部根拠を揃える

  • 賃料は不動産会社の査定やレントロールで第三者の数字を出す。
  • 管理組合の資料(修繕積立残高・滞納率・長期修繕計画)も確認。
  • 「言い分」ではなく「根拠」を揃えるのが、稟議突破の鍵です。

関連記事: 銀行融資の審査期間はどのくらい? 審査期間の目安や審査期間を短くするためのポイント!

提案書の型(これがあると銀行は読みやすい)

【実例紹介】融資成功の裏には必ず“準備”と“信頼”がある

私が審査していた時、正直「この資料は整理されてないな」と感じる案件は、その時点で印象が落ちていました。

逆に“答えが先に書かれている提案書”は稟議が進みやすいんです。

01|基本構成

  1. 案件サマリー(結論を先に)
  2. 物件概要(立地/築年/面積/耐震/管理)
  3. 市場性(家賃相場・需給状況)
  4. 資金計画(価格/諸費用/自己資金/希望融資)
  5. 返済期間分のキャッシュフロー推移予想(ベース/ストレス)
  6. 指標まとめ(DSCR/LTV/実質利回り)
  7. リスクと対策(空室・金利上昇・修繕)
  8. 出口戦略(借換or売却の根拠と時期)
  9. 今後のスケジュールと希望条件

02|作り方のコツ

  • 悪いシナリオを先に書く(例:空室率上昇、金利上昇)→ すぐ横に「対策」を書く。
  • 表や図で1ページ1テーマ。迷子にならないように並べる。
  • 「希望条件」だけでなく、許容できる代替案も明記する。

これだけで「この投資家は分かっている」と銀行の印象は大きく変わります。

参考記事:【融資の実行とは?】企業が融資を受ける際のスケジュールや注意点を徹底解説!

銀行の選び方(誰に・いつ・どう当てるか)

「節税すると融資を受けにくい」は本当なのか?

01|金融機関の向き不向き

  • 信金・地銀:地元や案件規模と合えば柔軟性あり。
  • メガバンク:区分には基本的に消極的。超富裕層のプライベートバンキング枠以外は難しい。
  • 政策系(公庫・商工中金):区分は投資商品性が強く、対象になりにくい。そもそも投資家NG、不動産賃貸業者なら土台にのるかも。

02|タイミングも重要

  • 期末(3月・9月)は実行件数を伸ばしたい時期。
  • 支店の担当者が「本部に持って行こう」という温度感を持つかどうか。

これは正直「人と人の関係」にも左右されます。

だからこそ、普段から銀行とつながりを持っておくことが、いざという時の融資成功率を大きく高めるんです。

参考記事:福岡県で事業融資を受けるならどこの銀行がおすすめ?|元銀行審査官が教える“選び方”

参考記事: 熊本県で事業融資を受けるならどこの銀行がおすすめ?|元銀行審査官が教える“選び方”

それでも区分で進めるなら

税理士やコンサルに任せきりで大丈夫?助言の質が資金調達を左右する

私は原則「一棟ものを推奨」と考えています。

ですが、どうしても区分に合理的な理由がある方もいるでしょう。

そういう場合は、以下だけは最低限チェックしてください。

  • 出口(借換・売却)の現実性が査定や事例で説明できること
  • 新耐震/適切な面積/需要が安定した立地
  • 修繕積立金が健全、滞納率が低い
  • 自己資金20〜40%以上で、DSCR1.2を確保できる設計

参考記事:【融資が通る社長はここが違う】銀行に「信頼される社長」と「警戒される社長」の決定的な差

まとめ:結局どっちを選ぶべき?

  • 不動産投資を“事業”として拡大したいなら、はじめから一棟もの一択です。
  • 区分はCFが薄く、審査も厳しいため、ノンバンクしか付かない時点で「買わない判断」が基本
  • それでも区分をやるなら、合理的な理由と徹底準備が必要です。

私は、ただの元銀行員ではなく、銀行本部の融資審査部で不動産投資案件を精査してきた人間です。

だからこそ、ネットに出回らない“銀行が本当に見るポイント”を把握しています。

当社(ホンマル株式会社)では、

  • CFやDSCRの事前診断
  • 提案書・CF表の作成支援
  • 銀行選定とアプローチの段取り設計

をお手伝いできます。

「とりあえず、私の案件は通る可能性があるのか?」を整理したい方は、まずは初回のオンライン相談(無料)をご利用ください。

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参考記事:ホンマル株式会社はどんな会社? 銀行融資調達サポートと月額制「社外CFO」の実力を徹底解説

  • ✅ 対応地域:全国OK(Zoom・電話対応可能)
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また、弊社では一緒に働く仲間も募集しています。
銀行員経験のある方は、ぜひ他の記事やYouTube動画もチェックしていただき、ご連絡いただけると嬉しいです。

この記事を書いた人

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代表コンサルタント・村松

銀行・本部審査部門にて2,000社以上の企業融資に携わってきたキャリアを持つ代表コンサルタント。銀行の融資営業・審査業務の両方の実務経験。豊富な知見を活かし「お客様の結果(銀行からの融資調達)にコミット」できます。経営者の方々の、事業繁栄につながる情報を発信します。