
【元銀行員が本音解説】
内部留保って悪なの?よくある誤解と経営者のリアルな本音
この記事は約7分で読めます。
- 内部留保は現金じゃない。会計上は利益剰余金と呼ばれ、設備や売掛金など事業の中で動いている。
- 「内部留保が多い=現金が多い」は大きな誤解。
- 企業が内部留保を持つのは、将来の投資や不測の事態に備えるため。
- 批判されるのは、内部留保を活かさず眠らせてしまうケース。
- 銀行も自己資本比率と同じくらい、現金預金残高を見て企業体力を判断している。
関連記事(こちらもぜひ):【2025年最新】銀行審査は“ここで決まる”!融資を通す3つのポイントを元審査官が公開
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1. まず、「企業は内部留保を溜めすぎ!」ってホント?

ニュースやSNSで、よくこんなフレーズを耳にしますよね。
「企業は内部留保を溜め込みすぎだ!社員の給料に回すべきだ!」
正直、このセリフを聞くたびに「いやいや、それちょっと誤解してるな…」と思ってしまいます。
私も銀行員時代、数千社の決算書を見てきましたが、世間で言われる“内部留保”と、実際に経営の現場で見ている“内部留保”は、まったく別物なんです。
過去の関連記事:【警告】銀行が“絶対に”聞きたくない社長の言動5選!|銀行審査・注意してください
2. 内部留保の正体は?

実は「内部留保」という言葉、会計の正式用語ではありません。
正式な科目名で言えば利益剰余金といって、ざっくり言えば「過去に稼いだ利益の積み上げ」です。
でも、ここが大事なポイント。
利益剰余金=現金ではありません。
決算書に利益剰余金が10億円と書いてあっても、銀行口座に10億円眠っているわけではないんです。
参考記事:銀行・信金に決算書を提出するときの注意点7選|資金繰り表・3年計画で“未来”も見せる
3. 現金と内部留保はぜんぜん違う

例えるなら…
「冷蔵庫の中身」と「銀行口座の残高」くらい違います。
- 内部留保(利益剰余金)は、「これまで稼いだ利益の累計」。
設備や在庫、売掛金、さらには開発費など、事業のあちこちに形を変えて存在します。 - 現金預金残高は、「いま手元にすぐ使えるお金」。
企業の“瞬発力”や“体力”を測るならこっちを見ます。
銀行の融資審査でも、自己資本比率だけでなく、現金預金残高をめちゃくちゃ重視します。
利益剰余金が多くても、現金が少ない企業は山ほどあります。
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参考記事:他人と比べない経営が強い会社をつくる|“ひたすら自分に集中する”経営者が成功する理由
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4. 「内部留保=貯め込んでる」は誤解

内部留保が多いからといって、「金庫に現金を積み上げている」わけではありません。
むしろ多くは、すでに事業に再投資されています。
たとえば…
- 取引先への販売でまだ入金がない売掛金
- 生産力を上げるための新しい機械設備
- 商品や原材料の在庫
- 将来の売上のための広告宣伝費や開発費
つまり、内部留保は“お金がぐるぐる回った結果”の数字であって、“余って眠っている現金”ではないんです。
5. 企業が内部留保を持つ理由

では、なぜ企業は内部留保を厚くしようとするのでしょう?
① 将来のピンチに備えるため
リーマンショック、コロナ、災害…
売上が一気に減るとき、頼りになるのはやっぱり自己資金です。
② 銀行に頼りすぎないため
不景気になると銀行が貸し渋ることも。
「いざという時に自分の資金で動ける」ほうが強いです。
③ 投資の原資を確保するため
新規事業、M&A、大規模な設備更新など、借入だけに頼らずスピード感を持って投資できます。
④ 雇用を守るため
人件費は固定費。売上が下がっても支払う必要があるため、そのバッファにもなります。
6. 「溜めすぎ」批判が広がる理由

ではなぜ、「企業は内部留保を溜め込みすぎだ!」という話が世間で広まるのでしょう?
理由はいくつかあります。
- 統計上の見え方
賃金がなかなか上がらない一方で、企業の利益剰余金が増えているデータがある。 - イメージの誤解
「内部留保=現金が山積み」という報じ方がされやすい。 - 政治的メッセージとして使いやすい
「賃上げしろ」という主張に説得力を持たせやすい。 - メディアの単純化
複雑な会計の話より、単純な構図のほうがニュースになりやすい。
でも現場を知っている人からすると、「そんな単純な話じゃないんだけどなぁ…」というのが本音です。
7. 本当に問題な内部留保はこれ

内部留保が悪いわけではありません。
問題は、それが眠ってしまっている場合です。
例えばこんなケース
- 現預金が潤沢にあるのに、設備投資も人材投資もしない
- 株主や社員への説明なく、ただ積み上げている
- 成長余力はあるのに「不安だから」で行動しない
こういう状態は、確かに機会損失を生みますし、会社の将来を縮める可能性があります。
8. 中小企業がやるべき内部留保の“賢い使い方”

中小企業の場合、「内部留保は多ければ多いほどいい」とは限りません。
ポイントは“活かす”ことです。
① 銀行に見せるための準備
銀行は自己資本比率も見ますが、それと同等に現金預金残高を重視します。
決算書の数字だけでなく、「この資産は現金化しやすい」という説明を資料で添えると評価が上がります。
② 現金と投資のバランスを決める
例えば「内部留保のうち◯%は現金で残す」「残りは設備や人材に回す」とルール化しておくと判断が早くなります。
③ 将来の使い道をストーリー化する
設備更新や新規事業、人材育成など、内部留保を使った成長計画を作っておくと、批判もされにくく、銀行からの信用も得られます。
9. 銀行視点で見た内部留保

銀行員時代、私は必ず次の2つを見ていました。
- 自己資本比率(財務の安定性)
- 現金預金残高(短期の支払い能力・安心感)
内部留保の数字だけを見ても、本当の企業体力は分かりません。
だからこそ「内部留保が多い=現金が多い」という考えは危険です。
10. まとめ

- 内部留保は正式な会計用語ではなく、利益剰余金を指す通称。
- 利益剰余金=現金ではない。設備や在庫、売掛金など、事業の中で形を変えて存在している。
- 銀行や投資家が本当に見ているのは、内部留保の数字だけでなく現金預金残高や自己資本比率。
- 内部留保は“貯める”より“活かす”ほうが会社を成長させる。
- 将来投資・雇用維持・信用力向上に繋がる活用と見せ方が大切。
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