
「持たざる経営」という選択肢―地方で広がる不動産証券化と資金調達の新しい形
こんにちは、ホンマル株式会社の代表・村松です。
私は元銀行の本部審査部門で2,000社以上の融資審査に携わった後、現在は中小企業向けに融資調達や財務戦略のサポート、社外CFOを行っています。
この記事は7分で読めます
今日のテーマは最近よく耳にする「持たざる経営」。
資産を持たないで経営するなんて、どういうこと?と不思議に思う方も多いと思います。
実は今、地方でこの仕組みが一気に広がっていて、古民家を改装した宿泊施設や老人ホームの開発に活用されているのです。
この記事では、不動産証券化を活用した「持たざる経営」の仕組みやメリット・リスクを、できるだけ専門用語を噛み砕いてわかりやすく解説します。
※本記事の内容は、日本経済新聞(2025年9月5日付 朝刊)「『持たざる経営』地方で拡大 不動産の証券化、5年で6倍」より参照しています。
- 不動産証券化を活用した「持たざる経営」が地方で急拡大
- 企業は資産を持たずに資金を調達、本業に集中できる
- 実際の事例:古民家宿泊施設(静岡)、老人ホーム(熊本)
- 地銀や投資家も地方物件に注目、都市部より利回りが高い背景
- ただし人口減少リスクもあり、収益性の見極めが必須
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「持たざる経営」とは?

「持たざる経営」とは、ざっくり言うと 「不動産や設備を自社で所有せず、借りる・使うだけで経営するスタイル」 のことです。
これまで多くの企業は、ホテルや工場、介護施設などを自社で所有してきました。
でも今は、不動産を一度ファンドやSPC(特別目的会社)に売却し、運営だけを請け負う形が増えているのです。
こうすることで、売却した分の資金を借金返済や新しい投資に回せるし、バランスシート(会社の財務状態)も軽くなります。
たとえば…
- 古民家をファンドに売却して資金を確保 → その資金で新しい古民家を改装
- 老人ホームをSPCに所有させる → 自社は運営だけを続ける
つまり「不動産は持たないけれど、ビジネスは続ける」仕組みなんですね。
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なぜ今、地方で広がっているのか?

ここ数年で、この「持たざる経営」が地方で一気に広がりました。数字を見てみましょう。
- 東京や大阪など大都市以外の地方で、証券化された物件の件数は5年で6倍に増加。
- 一方で都市部も増えてはいますが、伸び率は地方の方が圧倒的に高い。
なぜ地方で伸びたのか?理由は大きく3つあります。
- 都市部は投資が過熱しすぎて利回りが低下
都市部では物件の取り合いが激しくなり、投資家にとって収益性が下がっている。 - 地方はまだ利回りが高い
投資家から見ると「お得な投資先」として注目されやすい。 - 地銀が積極的に関与している
低金利で稼ぎにくい地銀が、不動産証券化案件に融資して新しい収益源を確保している。
つまり「投資家のお金が地方に流れ込みやすい環境」ができあがっているわけです。
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実際の事例から学ぶ【日経新聞内容】

事例① CSAトラベル(静岡市)
- 古民家を改装した宿泊施設を2棟、ファンドに売却。
- 運営はそのままCSAトラベルが続け、売却で得た資金を新しい古民家改装に使った。
- 投資にはセキスイハイム東海や山梨中央銀行も関わっており、地域ぐるみで仕組みを支えた。
→ 「資産を売って、次の投資資金をつくる」というシンプルな活用例です。
参考記事:【融資で4億円調達したい!】“事前の一手”で決まる。やさしく読めるけど中身はガチな通し方
事例② ケンプロ(熊本市)
- 300室規模の大型老人ホーム「メディケア癒やしDX長嶺」の開発に約30億円が必要。
- 通常融資では難しい規模だったため、SPCを通じて資金を調達。
- 芙蓉総合リースや肥後銀行などが関与。
→ 証券化を使ったからこそ、大規模案件が実現できたケースです。
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参考記事:他人と比べない経営が強い会社をつくる|“ひたすら自分に集中する”経営者が成功する理由
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経営者にとってのメリット

では、経営者にとって「持たざる経営」にはどんな良い点があるのでしょうか?
- 資金繰りが楽になる
不動産を売却することでまとまった資金を得られる。 - 借入枠を温存できる
通常の銀行融資を使わずに済むため、将来の借入余力が残る。 - 本業に集中できる
不動産を所有するリスクや固定資産税の負担がなくなり、運営やサービス改善に注力できる。 - 銀行との交渉力が増す
「証券化も検討している」と伝えるだけで、銀行側も条件を見直すことがある。
銀行の審査部にいた立場からお伝えすると、「持たざる経営」は財務指標の見え方を変える力があります。
不動産を売却して資産を軽くすると、自己資本比率や債務償還年数といった“銀行が重視する数字”が改善します。
つまり「証券化は銀行との交渉材料にもなる」ということです。
借入枠を残しながら資金を確保できる会社は、銀行から見ても「次の融資を通しやすい会社」になりやすいのです。
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見逃せないリスクと注意点

もちろん、良いことばかりではありません。リスクもあります。
- 地方の人口減少リスク
今は観光客や高齢者需要で成り立っても、10年後に同じ収益を上げられるかは不透明。 - 収益性の見極めが必要
「地方創生」という名目で採算に合わない施設を建ててしまうと、投資家も銀行も損をする。 - 運営リスク
所有権はファンド側にあるため、運営が上手くいかないと契約を切られる可能性もある。
もちろん、証券化が万能というわけではありません。
銀行にいた頃、地方創生を名目にした案件が採算割れして、再建に苦労したケースも見てきました。
大事なのは「数字で裏付けられた収益計画」を持つこと。
その上で、証券化を使うか、銀行融資を使うかを戦略的に選び分けるのが正解です。
まとめ:「資産の持ち方」が未来を左右する

「持たざる経営」という言葉は少し難しく聞こえるかもしれませんが、要は資産を手放してでも柔軟に資金を確保し、本業を伸ばすための経営戦略です。
これまで「借入か自己資金か」の二択で悩んでいた経営者にとって、不動産証券化は新しい選択肢となります。
特に中堅企業にとっては、資産の持ち方ひとつで銀行からの見られ方も大きく変わります。
資金調達は単なる「お金集め」ではなく、経営そのものに直結する戦略。
ぜひ「持たざる経営」という考え方を知っていただければと思います。
最後に
資産の持ち方を少し変えるだけで、会社の財務体質や成長スピードは大きく変わります。
- 「うちの会社でもできるのか?」
- 「銀行融資と比べてどう違うのか?」
そんな疑問があれば、ぜひお気軽にホンマル株式会社にご相談ください。
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参考記事:ホンマル株式会社はどんな会社? 銀行融資調達サポートと月額制「社外CFO」の実力を徹底解説
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