「持たざる経営」という選択肢―地方で広がる不動産証券化と資金調達の新しい形

持たざる経営とは?

「持たざる経営」という選択肢―地方で広がる不動産証券化と資金調達の新しい形

こんにちは、ホンマル株式会社の代表・村松です。

私は元銀行の本部審査部門で2,000社以上の融資審査に携わった後、現在は中小企業向けに融資調達や財務戦略のサポート、社外CFOを行っています。

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今日のテーマは最近よく耳にする「持たざる経営」

資産を持たないで経営するなんて、どういうこと?と不思議に思う方も多いと思います。

実は今、地方でこの仕組みが一気に広がっていて、古民家を改装した宿泊施設や老人ホームの開発に活用されているのです。

この記事では、不動産証券化を活用した「持たざる経営」の仕組みやメリット・リスクを、できるだけ専門用語を噛み砕いてわかりやすく解説します。

※本記事の内容は、日本経済新聞(2025年9月5日付 朝刊)「『持たざる経営』地方で拡大 不動産の証券化、5年で6倍」より参照しています。

日経新聞の元記事はこちらです

早速!この記事の要約・ポイント
  1. 不動産証券化を活用した「持たざる経営」が地方で急拡大
  2. 企業は資産を持たずに資金を調達、本業に集中できる
  3. 実際の事例:古民家宿泊施設(静岡)、老人ホーム(熊本)
  4. 地銀や投資家も地方物件に注目、都市部より利回りが高い背景
  5. ただし人口減少リスクもあり、収益性の見極めが必須
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「持たざる経営」とは?

銀行融資の「裏技」とは?見えない信頼づくりが実はカギ

「持たざる経営」とは、ざっくり言うと 「不動産や設備を自社で所有せず、借りる・使うだけで経営するスタイル」 のことです。

これまで多くの企業は、ホテルや工場、介護施設などを自社で所有してきました。

でも今は、不動産を一度ファンドやSPC(特別目的会社)に売却し、運営だけを請け負う形が増えているのです。

こうすることで、売却した分の資金を借金返済や新しい投資に回せるし、バランスシート(会社の財務状態)も軽くなります。

たとえば…

  • 古民家をファンドに売却して資金を確保 → その資金で新しい古民家を改装
  • 老人ホームをSPCに所有させる → 自社は運営だけを続ける

つまり「不動産は持たないけれど、ビジネスは続ける」仕組みなんですね。

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なぜ今、地方で広がっているのか?

「節税すると融資を受けにくい」は本当なのか?

ここ数年で、この「持たざる経営」が地方で一気に広がりました。数字を見てみましょう。

  • 東京や大阪など大都市以外の地方で、証券化された物件の件数は5年で6倍に増加。
  • 一方で都市部も増えてはいますが、伸び率は地方の方が圧倒的に高い。

なぜ地方で伸びたのか?理由は大きく3つあります。

  1. 都市部は投資が過熱しすぎて利回りが低下
    都市部では物件の取り合いが激しくなり、投資家にとって収益性が下がっている。
  2. 地方はまだ利回りが高い
    投資家から見ると「お得な投資先」として注目されやすい。
  3. 地銀が積極的に関与している
    低金利で稼ぎにくい地銀が、不動産証券化案件に融資して新しい収益源を確保している。

つまり「投資家のお金が地方に流れ込みやすい環境」ができあがっているわけです。

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実際の事例から学ぶ【日経新聞内容】

税理士やコンサルに任せきりで大丈夫?助言の質が資金調達を左右する

事例① CSAトラベル(静岡市)

  • 古民家を改装した宿泊施設を2棟、ファンドに売却。
  • 運営はそのままCSAトラベルが続け、売却で得た資金を新しい古民家改装に使った。
  • 投資にはセキスイハイム東海や山梨中央銀行も関わっており、地域ぐるみで仕組みを支えた。

→ 「資産を売って、次の投資資金をつくる」というシンプルな活用例です。

参考記事:【融資で4億円調達したい!】“事前の一手”で決まる。やさしく読めるけど中身はガチな通し方

事例② ケンプロ(熊本市)

  • 300室規模の大型老人ホーム「メディケア癒やしDX長嶺」の開発に約30億円が必要。
  • 通常融資では難しい規模だったため、SPCを通じて資金を調達。
  • 芙蓉総合リースや肥後銀行などが関与。

→ 証券化を使ったからこそ、大規模案件が実現できたケースです。

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参考記事:他人と比べない経営が強い会社をつくる|“ひたすら自分に集中する”経営者が成功する理由

経営者にとってのメリット

節税&大口融資の両立を図るためのポイント

では、経営者にとって「持たざる経営」にはどんな良い点があるのでしょうか?

  • 資金繰りが楽になる
    不動産を売却することでまとまった資金を得られる。
  • 借入枠を温存できる
    通常の銀行融資を使わずに済むため、将来の借入余力が残る。
  • 本業に集中できる
    不動産を所有するリスクや固定資産税の負担がなくなり、運営やサービス改善に注力できる。
  • 銀行との交渉力が増す
    「証券化も検討している」と伝えるだけで、銀行側も条件を見直すことがある。

銀行の審査部にいた立場からお伝えすると、「持たざる経営」は財務指標の見え方を変える力があります。

不動産を売却して資産を軽くすると、自己資本比率や債務償還年数といった“銀行が重視する数字”が改善します。

つまり「証券化は銀行との交渉材料にもなる」ということです。

借入枠を残しながら資金を確保できる会社は、銀行から見ても「次の融資を通しやすい会社」になりやすいのです。

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見逃せないリスクと注意点

【実例紹介】融資成功の裏には必ず“準備”と“信頼”がある

もちろん、良いことばかりではありません。リスクもあります。

  • 地方の人口減少リスク
    今は観光客や高齢者需要で成り立っても、10年後に同じ収益を上げられるかは不透明。
  • 収益性の見極めが必要
    「地方創生」という名目で採算に合わない施設を建ててしまうと、投資家も銀行も損をする。
  • 運営リスク
    所有権はファンド側にあるため、運営が上手くいかないと契約を切られる可能性もある。

もちろん、証券化が万能というわけではありません。

銀行にいた頃、地方創生を名目にした案件が採算割れして、再建に苦労したケースも見てきました。

大事なのは「数字で裏付けられた収益計画」を持つこと。

その上で、証券化を使うか、銀行融資を使うかを戦略的に選び分けるのが正解です。

まとめ:「資産の持ち方」が未来を左右する

「持たざる経営」という言葉は少し難しく聞こえるかもしれませんが、要は資産を手放してでも柔軟に資金を確保し、本業を伸ばすための経営戦略です。

これまで「借入か自己資金か」の二択で悩んでいた経営者にとって、不動産証券化は新しい選択肢となります。

特に中堅企業にとっては、資産の持ち方ひとつで銀行からの見られ方も大きく変わります。

資金調達は単なる「お金集め」ではなく、経営そのものに直結する戦略。

ぜひ「持たざる経営」という考え方を知っていただければと思います。

最後に

資産の持ち方を少し変えるだけで、会社の財務体質や成長スピードは大きく変わります。

  • 「うちの会社でもできるのか?」
  • 「銀行融資と比べてどう違うのか?」

そんな疑問があれば、ぜひお気軽にホンマル株式会社にご相談ください。

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参考記事:ホンマル株式会社はどんな会社? 銀行融資調達サポートと月額制「社外CFO」の実力を徹底解説

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この記事を書いた人

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代表コンサルタント・村松

銀行・本部審査部門にて2,000社以上の企業融資に携わってきたキャリアを持つ代表コンサルタント。銀行の融資営業・審査業務の両方の実務経験。豊富な知見を活かし「お客様の結果(銀行からの融資調達)にコミット」できます。経営者の方々の、事業繁栄につながる情報を発信します。