銀行の人事異動で融資の話が止まる理由とは?元審査官が対策を解説

銀行の人事異動で融資の話が止まる理由とは?元審査官が対策を解説

銀行の人事異動で融資の話が止まる理由とは?元審査官が対策を解説
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代表|村松

こんにちは。
ホンマル株式会社の代表・村松です。

私は元銀行の本部審査部門で2,000社以上の融資審査に携わった後、
現在は主に中小企業・中堅企業向けに融資調達や財務戦略のサポート、財務顧問(社外CFO)を行っています。

今回のテーマは

銀行の人事異動と、融資への影響について

です。

YouTube動画での解説はこちら

3月から4月にかけて(もしくは9月から10月)、銀行では人事異動の時期を迎えます。
この時期、中小企業の経営者にとって意外と見落としがちなのが、「担当者や支店長が変わることで、融資の話が止まる・戻る・慎重になる」というリスクです。

実際、3月までは前向きに見えていた話が、4月に担当者が変わった途端にトーンダウンすることは珍しくありません。

  • 「前の支店長は前向きだったのに…」
  • 「担当者が変わったら、また一から説明する感じになった」
  • 「融資の話が進んでいたのに、急に慎重になった」

このようなケースは、銀行実務では普通に起こります。

なぜなら、銀行取引は決算書の数字だけで決まるわけではなく、社長の考え方やこれまでの説明、銀行側の理解や温度感といった“定性面”も大きく影響するからです。
そして、人が変わると、その理解がいったんリセットされやすくなります。

本記事では、元銀行審査官の視点から、銀行の人事異動で融資の話が止まりやすい理由と、春の異動期に社長がやっておくべき対策をわかりやすく解説します。

今まさに設備投資や運転資金の相談を控えている方、銀行との関係づくりを見直したい方は、ぜひ最後までご覧ください。

この記事は8分で読めます

この記事の要点
  1. 銀行の人事異動で、前向きだった融資の話が止まることは珍しくない
  2. 銀行取引は数字だけでなく、理解や温度感などの定性面も大きい
  3. 新任の支店長や担当者は、最初は慎重に見やすい
  4. 大切なのは、銀行内部の引継ぎに期待しすぎず、社長側で整理して渡すこと
  5. 4月になってから慌てるより、3月のうちに準備しておく方がいい
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銀行の人事異動で融資の話が止まることは本当にあるのか

結論から言うと、普通にあります。

しかも、これは一部の特殊な会社だけの話ではありません。
決算が極端に悪い会社だけでなく、むしろ「それなりに話が進んでいた会社」で起こることもあります。

たとえば、3月の時点でこんなやり取りがあったとします。

  • 「この設備投資は前向きに検討しています」
  • 「今期の着地を見ながら進めましょう」
  • 「4月以降、正式に稟議を組みましょう」

社長としては、かなり前に進んでいる感覚になりますよね。
「もうほぼ大丈夫だろう」と感じても不思議ではありません。

ところが、4月に担当者や支店長が変わると、

  • 「まずは新体制で内容を確認させてください」
  • 「改めて今期計画を見せてください」
  • 「前回のお話は承っていますが、一度整理させてください」

こうした反応に変わることがあります。

経営者からすると、
「話が戻った」
「ひっくり返った」
という感覚になります。

ただ、銀行側から見ると、これは必ずしも意地悪をしているわけではありません。
新しい担当者や支店長が、自分の責任で見直しているだけなのです。

ここで大切なのは、
前任者が前向きだったことそのものではなく、
新任者が納得できる状態になっているかどうかです。

なぜ銀行の人事異動が中小企業に大きな影響を与えるのか

銀行は、人事異動がかなり多い業界です。

担当者も、支店長も、一般的には2〜3年くらいで異動していきます。
もちろん例外はありますが、長く同じ先を担当し続ける方がむしろ少ないくらいです。

銀行側としては、

  • 組織を固定化させない
  • 特定の取引先と距離が近くなりすぎない
  • いろいろな現場を経験させる

といった理由があります。

ここまでは、銀行側の事情です。
ただ、経営者の立場から見ると、これはかなり大きな出来事です。

なぜなら、銀行取引は決算書の数字だけで全部決まるわけではないからです。

もちろん、数字は大事です。
売上、利益、キャッシュフロー、借入残高、返済状況。
こうした定量情報は、融資判断の土台になります。

ただ実務の現場では、それだけではありません。

実際には、

  • 社長がどういう考えで経営しているのか
  • これまでどんな説明をしてきたのか
  • 銀行がその会社をどう理解しているのか
  • 担当者や支店長がどれくらい納得して動いていたのか

こうした定性面がかなり大きく影響します。

つまり、銀行融資は「数字の勝負」であると同時に、理解の積み上げの勝負でもあるのです。

だからこそ、人が変わると何が起きるかというと、
その会社に対する理解や温度感が、いったんリセットされやすいんですね。

ここを甘く見てしまうと、春の異動で思わぬ足踏みをすることがあります。

銀行の引継ぎは経営者が思うほど丁寧ではない

ここは、経営者が誤解しやすいポイントです。

「今の担当者や支店長がうちのことをよく分かってくれているなら、次の人にもきちんと伝わるだろう」

こう思いたくなる気持ちはよくわかります。
でも、現実はそんなにきれいではありません。

率直に言うと、銀行の引継ぎは、経営者が思っているよりかなりあっさりしています。

これは、銀行員が手を抜いているという意味ではありません。
単純に、異動時期の銀行員は本当に忙しいのです。

  • 自分の担当先の処理
  • 残っている案件の整理
  • 事務作業
  • 新しい赴任先の準備
  • 引継ぎ資料の作成

これを、短期間で一気にこなします。

その中で、1社1社について、

  • 社長がどんな考えで経営しているか
  • この会社の強みはどこか
  • どこに将来性があるのか
  • なぜ前任者が前向きに見ていたのか

といった背景まで、丁寧に引き継ぐのは、現実的にはかなり難しいです。

その結果、引継ぎで残りやすいのは、

  • 足元の業績
  • 借入残高
  • 返済状況
  • 直近の融資相談
  • 注意点

こういった情報です。

一方で、抜けやすいのは、

  • 社長の考え方
  • 会社の強み
  • 一見すると見えにくい競争力
  • 前任者がなぜ前向きに見ていたのか

こういう部分です。

つまり、社長としては
「何度も説明したし、ちゃんと伝わっているはず」
と思っていても、

新しい担当者から見ると、
実は“初見に近い状態”で見ていることも珍しくありません。

ここが、春の異動の怖いところです。

新任の支店長や担当者が最初に慎重になる理由

次に知っておきたいのが、新任者の心理です。

新しく来た支店長や担当者は、最初から攻めの姿勢で来るわけではありません。
むしろ逆で、最初はかなり慎重です。

これは、少し考えれば自然なことです。

着任したばかりの人は、

  • この支店にどんな取引先があるのか
  • どこにリスクがあるのか
  • 前任者の判断に無理がなかったか
  • どの案件をどう見ればいいか

こうしたことを短期間で把握しなければいけません。

その状態で、いきなり大きな融資や、判断が難しい案件に前のめりになるかというと、基本的にはなりません。

特に新任の支店長は、
着任直後に問題を起こしたくないという意識が強いです。

そのため、

  • まだ説明が十分でない案件
  • 将来計画に依存する案件
  • 前任者との関係性で進んでいた案件
  • 少し慎重に見た方がよい案件

こういったものは、いったん立ち止まる可能性があります。

社長からすると、
「なんで急に慎重になったんだ」
と感じるかもしれません。

ただ、銀行側からすると、
一度自分の目で確認したいというだけなのです。

ここで感情的になると、かえって銀行との関係が悪くなります。

大事なのは、
「話が止まった」と受け止めて焦ることではなく、
新任者が理解しやすい状態を作り直すことです。

春の異動期に社長がやるべき対策は“社長側から整理して渡すこと”

では、どうすればいいのでしょうか。

ここで大切なのが、
銀行内部の引継ぎに期待しすぎず、社長側から整理して渡すことです。

私はこれを、いわば
「社長側からの引継ぎ資料」
として作るのが有効だと考えています。

名前は何でもかまいません。
大事なのは、銀行が勝手にうまく引き継いでくれる前提で待つのではなく、
自社の情報を、自社でコントロールして渡すことです。

おすすめは、A4で2枚程度。
長すぎなくて大丈夫です。

むしろ、長すぎると読まれません。
ポイントは、「熱意を大量に書くこと」ではなく、銀行が理解しやすい形に整理することです。

引継ぎ資料に入れておきたい4つの項目

ここでは、引継ぎ資料に入れておきたい内容を4つに絞ってご紹介します。

1. その銀行とのこれまでの取引の経緯

まずは、その銀行とどのような関係を築いてきたのかを整理します。

  • いつから取引しているのか
  • どんな支援を受けてきたのか
  • 現在どのような位置づけなのか

たとえば、

「2018年に運転資金のご支援をいただいて以降、継続的にご相談させていただいております」
「設備投資の際にもご支援いただき、現在もメイン行として取引をお願いしております」

このくらいで十分です。

ここは単なる挨拶ではなく、
この銀行と継続的な関係を築いてきた会社です
という土台を作るパートです。

2. 数字だけでは伝わりにくい自社の強み

ここはかなり重要です。

新任者は、まず決算書を見ます。
でも、決算書だけではその会社の強みは伝わりません。

だからこそ、

  • 主要取引先との関係
  • リピート性
  • 受注の安定性
  • 競合が真似しにくい点
  • 地域でのポジション
  • 技術、人材、紹介ルート

こういった内容を、銀行が理解しやすい言葉で書いておく必要があります。

ポイントは、
熱い想いを書くことではなく、銀行がそのまま説明に使える言葉にすることです。

たとえば、

  • 「主要販売先3社との継続取引年数は10年以上で、売上の土台が安定している」
  • 「特定分野の施工実績が豊富で、価格競争だけに巻き込まれにくい」
  • 「紹介比率が高く、新規獲得コストが相対的に低い」

こういう書き方の方が伝わります。

社長としては「うちの強みは人です」「信頼です」と言いたくなることも多いですが、そのままだと銀行には少し抽象的です。
できるだけ、銀行が頭の中でイメージしやすい言葉にしておくのがコツです。

3. 今後3〜5年の投資予定や資金需要

これも非常に重要です。

新任の支店長や担当者は、
「この会社は今後どういう資金需要があるのか」
を早めに把握したいと考えています。

ですから、

  • 今年設備投資を考えている
  • 倉庫新設を検討している
  • 人員増加に伴い運転資金が必要になる
  • 借換や長短バランスの見直しを考えている

こういったことを、ざっくりでもいいので書いておくと有効です。

これがあると、銀行側も先回りして動きやすくなります。

逆に、ここが見えないと、新任者からすると
「この会社は今後どんな相談をしてくるのか分からない」
という状態になります。

銀行は、未来の資金需要が見える会社を好みます。
理由は、支援のイメージを持ちやすいからです。

4. 進行中の相談事項

ここはかなり実務的なポイントです。

もし前任の支店長や担当者と話していた内容があるなら、それは簡潔に整理して書いておいた方がいいです。

たとえば、

  • 設備資金について相談中
  • 金額感はこのくらい
  • 実行時期のイメージはこのくらい
  • 追加で求められていた資料は何か

こういった内容です。

ここを曖昧にしてしまうと、4月以降に
「そんな話でしたっけ?」
となりやすくなります。

もちろん、前任者の口約束を盾にして迫る必要はありません。
それをやると逆効果になることもあります。

ただし、

こういう話を、こういう前提で進めていました

という整理は、社長側で持っておくべきです。

これだけでも、銀行との会話の質がかなり変わります。

この資料はいつ渡すべきか

では、この整理した資料はいつ出すのがいいのでしょうか。

おすすめは、
4月の初回面談のタイミングです。

新しい支店長や担当者が挨拶に来たとき、
あるいはこちらから面談をお願いしたときに、

  • 「改めて、当社の現状と今後の資金需要を簡単に整理しました」
  • 「前任の方にもご相談していた内容を含めて、一度ご共有させてください」

こうやって、自然に渡せば大丈夫です。

ここで大切なのは、
圧をかけることではなく、理解しやすいように整えてあげることです。

この一手があるだけで、印象はかなり変わります。

新任者から見ると、

  • この社長は整理して話してくれる
  • 自社のことを客観的に説明できる
  • 今後の資金需要も見えている
  • 銀行との関係を大事にしている

こう見えやすいです。

つまり、ただ待つよりも、
社長側から“理解しやすい土台”を作ってあげた方が圧倒的に強いのです。

銀行の人事異動で慌てないために今やるべきこと

ここまでの話を踏まえると、春の異動期に社長がやるべきことは、そこまで複雑ではありません。

大事なのは、次の3つです。

1. 前任者との会話内容を整理しておく

進んでいる相談事項、話していた金額感、今後の想定時期などを整理しておきましょう。

2. 自社の強みを銀行向けの言葉で言語化しておく

「うちの強みはこれです」と感覚的に話せるだけでは足りません。
銀行が理解しやすい言葉に直しておくことが大事です。

3. 今後の資金需要を見える化しておく

設備投資、運転資金、借換、事業拡大。
今後どんな資金需要があるのかをざっくりでも整理しておくと、銀行との会話がスムーズになります。

これらを、4月になってから慌ててやるのではなく、3月のうちから準備しておく
それだけでも、銀行対応はかなり変わります。

まとめ|春の銀行人事異動は“待ち”ではなく“準備”で差がつく

銀行の人事異動は、経営者にとって思っている以上に影響が大きいイベントです。

理由はシンプルで、銀行取引は数字だけでなく、人の理解や温度感にも左右されるからです。

そして、

  • 前任者の理解は、そのまま引き継がれないことがある
  • 新任者は最初、慎重に見やすい
  • だからこそ、社長側で整理して伝えることが大事

というのが、今回のポイントです。

4月になってから
「話が戻った」
「トーンが変わった」

と慌てるより、3月から4月のこのタイミングで、自社の情報をきちんと整えておく方がいいです。

春の異動は避けられません。
でも、その影響を小さくする準備はできます。

ここに差が出ます。

銀行との関係づくりや説明資料の整理に不安がある方へ

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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  • 「銀行との話は進んでいるが、どこか不安がある」
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参考記事:ホンマル株式会社はどんな会社? 銀行融資調達サポートと月額制「社外CFO」の実力を徹底解説

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この記事を書いた人

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代表コンサルタント・村松

銀行・本部審査部門にて2,000社以上の企業融資に携わってきたキャリアを持つ代表コンサルタント。銀行の融資営業・審査業務の両方の実務経験。豊富な知見を活かし「お客様の結果(銀行からの融資調達)にコミット」できます。経営者の方々の、事業繁栄につながる情報を発信します。