
【2026年最新】系統用蓄電池の融資環境は変わった?プロジェクトファイナンス3事例を元銀行審査官が解説
こんにちは、ホンマル株式会社の代表・村松です。
私は元銀行の本部審査部門で2,000社以上の融資審査に携わった後、現在は主に中小企業・中堅企業向けに融資調達や財務戦略のサポート、財務顧問(社外CFO)を行っています。
今回は、2026年7月までに公表された系統用蓄電池事業への融資事例を取り上げます。
系統用蓄電池への参入を検討している経営者から、最近よく聞かれるのが次の質問です。
「系統用蓄電池への融資は、以前より受けやすくなったのでしょうか」
確かに、2026年に入り、系統用蓄電池事業を対象としたプロジェクトファイナンスや、複数案件をまとめた資金調達の事例が公表されています。
ただし、先に結論をお伝えすると、
「融資事例が増えた」ことと、「一般の中小・中堅企業も融資を受けやすくなった」ことは別の話です。
公表された事例を見ると、強いスポンサー、複数の蓄電所、実績ある運営体制など、銀行が融資を検討しやすい条件がそろっています。
中小・中堅企業が新規事業として参入する場合は、現在も会社全体の返済力を重視した融資審査になるケースが中心です。
系統用蓄電池案件を、
銀行へ相談する前に
整理したい方へ
系統用蓄電池事業は、将来性がある一方で、
銀行から見ると通常の設備資金より慎重に見られやすい分野です。
「自社の案件は、どこが評価されやすく、
どこが止まりやすいのか」
「今の状態で銀行へ持ち込んでよいのか」
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2026年に公表された3つの融資事例
まずは、2026年に公表された代表的な事例を見てみましょう。
事例1.SBI新生銀行による約60億円のプロジェクトファイナンス
2026年3月、SBI新生銀行は、電力市場販売型の系統用蓄電池事業に対して、約60億円のプロジェクトファイナンスを組成したと公表しました。
対象となったのは、株式会社レノバをメインスポンサーとし、NCSアールイーキャピタル株式会社、SMFLみらいパートナーズ株式会社が共同出資する事業です。
特徴は、電力市場での売買を中心とする大型の系統用蓄電池事業に対して、プロジェクトファイナンスが組成された点です。
一方で、レノバをはじめ、再生可能エネルギーや金融に関する経験を持つ企業がスポンサーとなっています。
単に将来性のある事業だから融資されたのではなく、スポンサーの信用力、事業運営の経験、関係者の体制まで含めて評価された案件と考えるべきでしょう。
事例2.全国14か所をまとめた49億円の融資
2026年4月、日本蓄電池株式会社は、全国14か所の高圧系統用蓄電施設を対象として、リコーリース株式会社との間で貸付限度額49億円の契約を締結したと公表しました。
SPCを活用したノンリコースローンで、複数の蓄電所をまとめて資金調達するポートフォリオ型のプロジェクトファイナンスです。
1か所の蓄電所だけに依存せず、全国に分散した複数案件を一体として扱っている点が特徴です。
複数案件をまとめることで、特定の設備や地域に問題が生じた場合の影響を分散しやすくなります。
銀行などの資金提供者から見ても、1案件だけを評価するより、事業全体の安定性を検討しやすくなる面があります。
事例3.MUFGによるバルク型プロジェクトファイナンス
2026年6月、三菱UFJフィナンシャル・グループは、関西電力、きんでんなどと系統用蓄電池事業を対象とした共同ファンドを組成したと公表しました。
三菱UFJ銀行は、投資先となる事業に対して、複数案件を一体として捉えるバルク型プロジェクトファイナンスを提供します。
この事例では、関西電力グループが蓄電所の運営や保守、電力市場での運用などを担い、きんでんが施工面の機能を提供します。
金融だけでなく、開発、施工、運営、資産管理まで含めた体制が構築されている点が重要です。
3事例に共通していること
これらの事例を見ると、系統用蓄電池事業への融資環境は、以前より一段進んだと考えられます。
銀行側にも事業を評価する知見が蓄積され、一定の条件を満たす案件では、プロジェクトファイナンスを組成できることが示されました。
ただし、3事例には共通点があります。
・信用力や事業経験を持つスポンサーがいる
・施工、保守、運用を担う事業者が明確になっている
・単独ではなく、複数の案件をまとめている事例がある
・数十億円規模の投融資を管理できる体制がある
・事業開始後のモニタリングや資産管理まで設計されている
つまり、「系統用蓄電池だから融資が出た」のではありません。
銀行が長期間にわたって資金を出せる事業構造が作られているから、融資が実現しています。
SPCを設立すればプロジェクトファイナンスになるわけではない
ここは誤解されやすいところです。
プロジェクトファイナンスでは、事業を行うためのSPC、いわゆる特別目的会社が借入主体になることがあります。
そのため、
「SPCを設立すれば、親会社の財務内容とは切り離して融資を受けられる」
と思われることがあります。
しかし、新しく設立したSPCには、通常、過去の売上も利益も返済実績もありません。
銀行がSPCに融資するには、対象事業から将来得られる収益、各種契約、設備の価値、スポンサーからの支援、計画未達時の対応などを細かく検証する必要があります。
SPCを作ること自体が、融資を受ける条件になるわけではありません。
むしろ、誰が最終的に事業を支えるのかが分からないSPCは、銀行にとって判断しにくい借入主体になります。
中小・中堅企業への融資も受けやすくなったのか
今回の事例を見て、
「当社でも系統用蓄電池事業に参入し、プロジェクトファイナンスで調達できるのではないか」
と考える経営者もいるかもしれません。
しかし、中小・中堅企業が新規事業として取り組む場合は、引き続き慎重な判断が必要です。
銀行は、系統用蓄電池事業の収支だけでなく、スポンサーとなる会社の既存事業も確認します。
具体的には、
・既存事業の売上、利益、キャッシュフロー
・現在の借入額と返済負担
・自己資本の厚み
・新規事業に投入できる自己資金
・計画未達時に追加資金を出せるか
・なぜ自社がこの事業に参入するのか
などです。
例えば、年商5億円の会社が総投資額10億円の事業に参入する場合、事業計画上は返済可能であっても、会社規模に対して投資額が大きいと判断される可能性があります。
収益が計画を下回った場合に、本業で支えられるかどうかも重要です。
したがって、中小・中堅企業では、既存会社の信用力を前提とするコーポレートファイナンスが、現在も現実的な選択肢になりやすいと考えられます。
※上記の金額は説明のための仮定であり、特定の融資可否を示すものではありません。
自社案件で、
どこが弱点になりそうか
確認したい方へ
系統用蓄電池案件では、
単に市場性があるだけでは足りません。
銀行は、
・スポンサー企業の信用力
・自己資金の厚み
・EPC・O&Mの体制
・収支前提の妥当性
・その会社がなぜこの事業をやるのか
まで含めて見ています。
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プロジェクトファイナンスを検討しやすい案件とは
今回公表された事例を踏まえると、プロジェクトファイナンスを検討しやすいのは、次のような案件です。
1.スポンサーの信用力が高い
計画未達時にも事業を支えられる財務体力や、再生可能エネルギー事業の経験があることです。
2.複数案件を管理できる
複数の蓄電所をまとめることで、地域や設備ごとのリスクを分散しやすくなります。
ただし、その分、高度な管理体制も必要です。
3.EPC、O&M、アグリゲーターが明確である
設備の設計・施工、運転・保守、市場での運用を誰が担うのか。
また、問題が発生した場合に誰が責任を負うのかが、契約上整理されている必要があります。
4.収益の下振れを検証している
市場価格、稼働率、電池の劣化、修繕費などが想定より悪化した場合でも、返済を継続できるかを検証する必要があります。
事業者から提示された収益シミュレーションを、そのまま採用するだけでは不十分です。
5.事業開始後の管理体制がある
銀行は融資実行時だけでなく、その後の事業管理も見ています。
稼働状況、収益、費用、借入返済などを継続的に報告できる体制が求められます。
銀行へ相談する前に確認したい7項目
系統用蓄電池事業への参入を検討している場合は、銀行へ相談する前に、少なくとも次の7項目を整理しておきましょう。
・総投資額と希望融資額
・投入できる自己資金
・系統連系の進捗状況
・EPC、O&M、アグリゲーターの候補
・基本計画と下振れ時の収益計画
・スポンサー企業が支援できる範囲
・既存取引銀行へ相談する時期
すべての契約を締結してから銀行へ相談する必要はありません。
一方で、土地と設備の候補しか決まっておらず、事業体制や収益計画が整理されていない状態では、銀行も具体的な判断ができません。
ある程度の見積りと事業スキームが固まった段階で、既存取引のある銀行へ初期相談するのが現実的です。
まとめ|系統用蓄電池の融資実例は増えたが、誰でも借りやすくなったわけではない

2026年に入り、系統用蓄電池事業を対象としたプロジェクトファイナンスの実例が複数公表されました。
銀行やリース会社などが、この事業を融資対象として評価し始めていることは確かです。
一方で、実現しているのは、強いスポンサー、複数案件、実績ある運営事業者、高度な管理体制などを備えた案件が中心です。
中小・中堅企業が新規参入する場合は、
「系統用蓄電池は成長市場だから融資を受けられる」
と考えるのではなく、
「計画どおりに進まなかった場合でも、返済を継続できる構造になっているか」
という銀行の視点で準備する必要があります。
融資環境は変化しています。
しかし、銀行が確認する基本は変わっていません。
事業の将来性だけでなく、スポンサーの信用力、自己資金、関係事業者、契約、下振れ時の返済力まで説明できるかが、融資を検討するうえで重要です。
自社の系統用蓄電池案件について、
「銀行はどこを見るのか」
「今の状態で銀行へ相談してよいのか」
「どの項目が融資審査で問題になりやすいのか」
を確認したい方は、次の記事もあわせてご覧ください。
▶ 系統用蓄電池事業の融資を通すには?銀行が見る5つのポイントを元審査官が解説!
https://www.honmaru.jp/battery-loan-bankpoints/
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https://www.honmaru.jp/contact
【参考資料】
・SBI新生銀行「電力市場販売型系統用蓄電池事業に対するプロジェクトファイナンスの組成について」
https://www.sbigroup.co.jp/news/2026/0331_16222.html
・日本蓄電池株式会社「系統用蓄電池事業におけるプロジェクトファイナンスの実行について」
https://www.nipponchikudenchi.co.jp/news/1629/
・三菱UFJフィナンシャル・グループ「系統用蓄電池事業を対象とした共同ファンド組成について」
https://www.mufg.jp/dam/pressrelease/2026/pdf/news-20260616-001_ja.pdf
【関連記事候補】
・系統用蓄電池事業「融資前チェックシート」
https://www.honmaru.jp/download_keito-check-sheet/
・系統用蓄電池事業の概要説明YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=mSqdEtMWeQg
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銀行員経験のある方は、ぜひ他の記事やYouTube動画もチェックしていただき、ご連絡いただけると嬉しいです。
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