系統用蓄電池事業の融資を通すには?銀行が見る5つのポイントを元審査官が解説!

系統用蓄電池事業の融資を通すには?銀行が見る5つのポイントを元審査官が解説!

こんにちは、ホンマル株式会社の代表・村松です。

私は元銀行の本部審査部門で2,000社以上の融資審査に携わった後、現在は主に中小企業・中堅企業向けに融資調達や財務戦略のサポート、財務顧問(社外CFO)を行っています。

今回の記事は「系統用蓄電池事業」における銀行融資について。

最近、当社にも問い合わせが増えつつある分野です。

ぱっと聞いて「昔の太陽光発電事業や、そのFITと似たような事業かな?」と思われる方が多いですが、実際には異なる点がとっても多いのです。

結論としては「系統用蓄電池への銀行融資は、現時点では非常にハードルが高い」です。

しかし、”絶対無理な話”ではありません。

本記事で解説いたします!

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この記事は7分で読めます

早速!この記事の要約・ポイント
  1. 系統用蓄電池への銀行融資は、現時点では非常にハードルが高い
  2. 銀行は「プロジェクトファイナンス」ではなく「コーポレートファイナンス」で見る傾向
  3. 融資の可否を分けるのは“スポンサー企業の信用力”と“自己資金の厚み”
  4. EPC/O&M業者の信頼性、事業の親和性が融資判断を左右する
  5. 将来的にはトラックレコードの蓄積により融資が進む可能性もある
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系統用蓄電池事業への融資の現状|銀行は「慎重すぎる」くらい慎重

再エネの文脈で注目を集める「系統用蓄電池事業」。

脱炭素の流れ、補助金制度、容量市場・需給調整市場の整備…

一見すると、将来性の明るいビジネスに見えます。

しかし、銀行目線で見ると話はまったく違います。

結論から言えば、

「現状では銀行融資のハードルは極めて高い。審査はほぼ“コーポレートファイナンス扱い”になる」

これが現実です。

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なぜ銀行は系統用蓄電池事業に対する融資に慎重なのか?

その理由は、金融機関がこの事業を“ハイリスク・ハイリターン事業”と見ているからです。

  • 蓄電池事業は、まだ市場として歴史が浅い
  • 融資期間は10年〜15年が目安だが、その期間のトラックレコード(審査履歴・長期的にどうなったか)が存在しない
  • 収益はJEPXなど市場価格に大きく左右される
  • 「5年後、10年後に本当に今と同じ収益があるのか?」の保証がない

つまり、銀行は「実績がないから決裁できない」状態なのです。

いわば、銀行審査部にとって“未知のビジネス”であり、「良さそうだが、信用する材料がまだ足りない」という段階です。

融資が通る企業(SPC)の共通点|最終的には“人と関係性”?

そのような中で、実際に融資が通るケースもあります。

そこに共通するのは、以下の条件です。

銀行が重視する項目解説
①スポンサー企業の信用力最終的には「誰がやるか」。
財務体力・実績・取引実績が重要。
②銀行との関係性の深さ長年の取引履歴、担当者・支店長レベルでの信頼関係があるか。
③自己資金・補助金の厚み補助金も含めて最低2〜3割の持ち出しはほぼ必須。
④事業との親和性本業とのつながり(建設・再エネ・電気工事など)があるか。
⑤EPC/O&M業者の信頼性技術的裏付け・保証・実績が十分か。

つまり、系統用蓄電池事業の融資は「事業を見て貸す」のではなく、「人を見て貸す」領域にあります。

プロジェクトの良し悪しよりも、スポンサーの信用がものを言うフェーズです。

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銀行が系統用蓄電池事業の融資審査に確認する5つのポイント

① キャッシュフローの安定性

銀行は「この事業で融資期間(例:10〜15年間)返済できる根拠があるか」を最も気にします。

売電収入・市場調整収入・容量市場収入などを現実的な前提で試算することが不可欠。

「JEPX平均単価をやや低めに設定」した“下振れケース”を準備しておくと、審査時に安心感を与えられます。

② EPC/O&M業者の信頼性

技術的な信頼性が低いと、銀行は一発で引くとか?

「保証期間」「メンテ契約」「実績(MW級導入経験)」を具体的に示しましょう。

地場業者単独よりも、大手メーカーや専門EPCの関与が強いほどプラス評価の傾向があります。

③ 事業の親和性・参入理由

意外に思われるかもしれませんが、まったく無関係の業種が“投資目的で”参入してくると、銀行は慎重になります。

逆に、「本業で電気工事や建設に携わってきた」「再エネ案件を過去に経験している」といった親和性があれば、「この企業は理解している」と若干ポジティブに評価される傾向。

参入理由を説明できるストーリー作りが重要です。

④ 自己資金と補助金

補助金は有利に働きますが、あくまで「交付決定後」から評価対象。

申請中の段階では“ほぼ加点なし”と見なされます。

※実際には、融資の大枠協議時点では「補助金採択前」で審査できますが、つなぎ融資など実際に融資実行の際には、「補助金採択済み」であることが必須。

銀行としても「他人の資金だけ頼み」の案件は嫌う傾向があるため、基本的に自己資金20〜30%以上を投下できる体力が求められます。

⑤ 銀行との関係性

最終的には「付き合いの深さ」が効きます。

新規で飛び込み相談しても、審査が通る可能性は極めて低いのが実情。

既存取引のある銀行に対して、“これまでの財務実績+本業の信用”を材料に「関連事業としての新規投資」という立て付けで相談するのが最も現実的です。

【将来】今後1〜2年で融資審査の流れが変わる可能性も

現時点では銀行の姿勢は慎重ですが、今後1〜2年以内に融資審査の流れが変わる可能性があります。

  • 各地で大型プロジェクトが動き始めている
  • 補助金・容量市場制度が整備中
  • 地銀・信金も「脱炭素関連案件を“将来的な収益源”」と位置づけているとの声も

つまり、「まだ難しいからやめよう」ではなく、

「将来の融資実現に向け、今のうちに財務・資料整備をしておく」

これが現時点の最善策です。

【補足】とはいえ…「先行者利益」を狙いたい

一方で、「今このタイミングで動くからこそ、先行者利益を得られる」という声も確かにあります。

ただし、これは系統用蓄電池事業に限らず、新規事業全般に共通する“銀行の慎重姿勢”の表れでもあります。

銀行の基本スタンスとして、

「ハイリスクな事業は低金利の銀行融資ではなく、ファンドやスポンサー出資でリスクマネーを調達すべき」
という考え方が根底にあります。

融資金利が1〜3%程度と低い以上、銀行がリスクを取って踏み込むインセンティブは小さいのが実情です。

私自身も、銀行がこの分野に対して慎重であることはやむを得ない現実だと考えています。

おすすめ記事:【2025年最新】銀行審査は“ここで決まる”!融資を通す3つのポイントを元審査官が公開

【参考】銀行の融資期間の目安

ちなみに、蓄電池は「国策」としての色合いが濃い分野。

補助金や制度面の後押しは融資判断にプラス要因となります。

気になる融資期間は15年程度がひとつの目安。

※関連記事はこちら→  系統用蓄電池ビジネスとは?融資調達は?三菱倉庫が400億円投資!【日経新聞解説】

まとめ|系統用蓄電池に関する銀行融資は「通りにくい」が「戦略次第」

系統用蓄電池事業の銀行融資は、現状では非常にハードルが高い

理由は単純で、銀行にとって“実績がない”から。

しかし、今後1〜2年で実例が増えれば、「再エネ×ファイナンス」の分野は確実に成熟します。

だからこそ今は、

  • 財務体力の強化
  • EPC・O&Mの選定
  • 補助金+融資を前提にした事業設計
    を進めるタイミングです。

ホンマル株式会社は、銀行審査目線から「通る事業構造」を設計するパートナーとして、再エネ・蓄電池に挑む企業を支援しています。

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参考記事:ホンマル株式会社はどんな会社? 銀行融資調達サポートと月額制「社外CFO」の実力を徹底解説

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この記事を書いた人

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代表コンサルタント・村松

銀行・本部審査部門にて2,000社以上の企業融資に携わってきたキャリアを持つ代表コンサルタント。銀行の融資営業・審査業務の両方の実務経験。豊富な知見を活かし「お客様の結果(銀行からの融資調達)にコミット」できます。経営者の方々の、事業繁栄につながる情報を発信します。